漢字ドリルのお礼を言いたい

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*** それから琴子は壁をすり抜けてすり抜けて、何となく自分の教室に行った。 月明かりだけが差し込む琴子しか居ない教室はシーン、と、していてどこまでも静かだった。 夜の学校というのは、昼間の学校しか知らなかった琴子にとって新鮮で意外と楽しく、あっという間に時間は過ぎていき、いつも通りの朝がやってきた。 「ねぇねぇ、昨日のニュース、見た?」 「見た見た〜」 自分の死について話すクラスメイトを朝から幾度となく見掛けた。 今日だけはきっと、生前、影が薄いと言われていた琴子の存在が一弾と濃くなった事だろう。 琴子は自席で宮瀬くんが登校してくるのを待った。 しかしどうしたものか。
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