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やばい…
琴子はガサゴソ、と机の中に手を突っ込みながら内心焦っていた。
高橋先生は…怖い。とても怖いのだ。
忘れ物をしたとなれば、それはそれは大変な事になる。どんなにしおらしく、目に涙を浮かべて「忘れました」と言っても「コラーっ!」が、必ず飛んでくる。高2にもなって、琴子の心には”怒られたくない” が未だ色濃く漂っていた。
静かにサー、と血の気が引き琴子の顔色はみるみるうちに青ざめていく。
そう。そうなのだ…どんなに机の中をさばくっても一向に顔を出さない”漢字ドリル”。
琴子は今日、漢字ドリルを家に忘れてきたのだ。
最悪だ…
なんでよりによって漢字ドリル…。
視線をさ迷わせ、琴子は暫し考えた。
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