漢字ドリルのお礼を言いたい

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心臓はもうとっくに止まっているがなぜだか琴子はドキドキという感覚が鮮明にあった。 目と鼻の奥の方がツーンと静かに刺激される。 だめだ…泣いちゃうよ……。 死んでから1度も泣いていなかった琴子の目から涙が溢れ出す。 宮瀬くんと関わったのなんて漢字ドリルを貸してもらった時ぐらいなのに…。 思わず頬に涙を伝らす。 心がジーン、と温まっていくのを感じた。 だけどそんな雰囲気をぶち壊すかのように次の瞬間、校門の辺りで人影が不気味に蠢いているのが目に入った。 月明かりに照らされ人影の正体が判明したその時琴子は叫んだ。 「宮瀬くん…!逃げて!」 人影がこちらに歩いて来ていた。
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