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「う”っ…」
とても自分から出た声、とは思えないような声を発した琴子はアスファルトに腰を下ろし、自分の横腹に触れた。
頭が徐々に理解していって、「え」と短く声を上げる。琴子の横腹にナイフが突き刺さっていたのだ。
そして傷口からとめどなくドバドバと真っ赤な血が流れ出ている。
嘘…、私…刺され……。
血なまぐさい匂いが鼻をかすめる。同時にここから走り去る足音がやけに鼓膜に響いた。
あ、これ…、死ぬやつだ……。
重くなっていく瞼に抗えず、琴子は静かに目を閉じた。
***
「……きろ…、起きろ……」
どこからともなく聞こえてくる「起きろ」に琴子は「んん…」と唸り声をあげて、目を開けた。
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