夢三夜

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 古恋鳥(いにしえにこいうるとり)が鳴いたあの日、移ろう四季を失った。  碁盤の目と言われる京都の町の中心部から少し外れた北の端、丑寅の方角にひっそりとある門跡寺院。そこで大学へ通いながら朝夕のお勤めをして、もう四年。  日の昇る気配もまだない薄闇に、手元の灯りを頼り身支度をする。  静寂の立ち込めた庭園は絵巻物のよう。その世界を現実たらんとする赤朽葉、空気を濁す白い呼気が、俺の腐臭を知らしめる。
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