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全身が焼けるように熱くなり、意識が戻る。
俺の目の前には信じられない光景が広がっていた。
いつもお祈りをしている教会が燃えている。
外からは人の叫び声が聞こえる。
見慣れた筈なのに、変わり果てた街がそこに存在していた。
眠っていたのは一瞬の筈なのに、いったいこの短時間でなにが起きたんだ?
俺の目の前には、大人の姿になったカノンがいた。
カノンの身体には血が付いていて、傷付いていた。
近付けなかったのは殺伐とした雰囲気だからではなく、実際に足が前に動けない。
声を掛けたくても、自由に声を出す事が出来ない。
そういえば、意識を失う前にミッシェルが『追体験』と言っていた。
これは、ゲームの世界が現実に起こった時の光景なのか。
俺の意思とは反対に、勝手に身体が動く。
これは、俺ではなくフォルテの記憶の中の出来事だ。
血で濡れた剣をカノンに向けていた。
「貴方は何故、神に逆らうのですか」
「神?そんなものが居たら見てみたいね」
「止まらないと言うなら、私が止めます」
「お前のような奴、ムカつくんだよ…正義ぶっているようなお前ら偽善者が!!」
カノンに向かって、剣を振り上げていた。
いろんな感情が頭に流れ込んできた。
それは、悲しみ…憎しみ…絶望感が支配している。
苦しい…ゲームでのフォルテはこんな気持ちでいたのか?
吐きそうだ、こんな感情知りたくない。
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