第一話・転生先は悪役令息

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*** 揺れる水面を呆然と眺めていた、何をしたらいいのか分からない。 両手に抱えた縄を地面に落として、一人そこに立っていた。 何をしているのか、また嫌われるような事をしたのか。 そんな気配も、考えも一切していなかったんだと気付いた。 ただ、俺はこの時…何も感情がなかった…無という感情が相応しい。 怒りも悲しみもない自分は、いったい何なんだろうと水面を眺めていた。 空が暗くなって母さんが探しに来るまで、俺はそこにいた。 心配して走り回っていた母さんに抱きしめられて、申し訳ない気持ちになった。 俺は関わる人に嫌われて、迷惑掛ける存在なんだ。 皆俺からいなくなる、俺は何のためにここにいるのか。 ある日願ったんだ、俺という存在を消して下さいと… だから俺は生まれ変わったかのように、生前の記憶を取り戻したんだ。 俺はフォルテだけど、違うフォルテになりたかった。 記憶を思い出す前も俺も悪者になりたくなかったんだ。 友達付き合いが苦手な子供で、その積み重ねが歪み大人になると悪役へと成長していた。 俺がフォルテに教えてあげないといけない、友達付き合いというものを… でも、俺はなんで湖の前に縄を持って立っていたんだろうか。 誰もいないのに、これはイタズラをしようとしていたのか?…いや違う。 目を開けると真っ白な天井が視界に広がっている。 俺は助けようとしたんだ、あの時の俺はイタズラなんて考えていなかった。 俺が無だったのは、誰も信じてくれなかったからだ。 普段の行いと言われたらそれまでだ、言い返す言葉がない。 何故助けようとしたのか、そもそもどういう状況だったか分からない。 もうすぐで思い出せそうなのに、なにかに遮られたかのように分からない。 考えているうちに、眠気に再び襲われて二度目の眠りについた。 『おやすみ、フォルテ』
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