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俺をまっすぐと見つめるカノンの顔は、聖職者のように慈愛に満ちていた。
表情は変わらないけど、カノンからは神様のような神聖さがある。
自称、本物の神様と言うミッシェルとは何処か違う。
一人でも俺の気持ちが分かってくれるというのは、とても嬉しいものなんだな。
腕を引かれて、部屋を出て連れられた場所は赤子を抱いた聖母の像がある礼拝堂だった。
数人が椅子に座っていて、瞳を閉じて祈りを捧げていた。
俺もカノンと一緒に椅子に座った。
気持ちが落ち着いてきて、カノンが隣で他の人と同じように瞳を閉じて両手で握り祈りを捧げていた。
俺も見よう見まねで聖母の像に祈りを捧げる。
やった事がないから、これでいいのかは正直分からない。
でも、暖かな光が俺達を照らしていた。
最初に口を開いたのはカノンだった。
「人は目の前にあるものを最初に見るんです」
「目の前の?」
「悪意がない純粋な顔よりも、差し出されたものを見て皆は誤解されたのでしょう」
目蓋を開けてカノンの方を見ると、俺より先にカノンは俺を見つめていた。
最初に見たのが、おもちゃとはいえ蛇や虫だったら俺だって怖い。
カノンも最初に見たのはおもちゃの方だと言って「私も最初は驚きました」と言っていた。
でも、カノンはその後に俺の顔を見て分かってくれた。
カノンのような人ばかりではない、謝る事以外に許される方法はあるのかな。
逃げ出す事ばかり考えていた、もっと向き合わないと。
聖母様に祈れば、俺を正しい道に導いてくれるような気がする。
もう一度目蓋を閉じて、祈りを捧げてみる。
「俺は皆を怖がらせました、どうしたらいいのか分かりません…どうしたらいいんでしょうか」
「……」
「聖母様に、ちゃんと届くのかな」
隣にいるカノンに聞くと、静かに首を縦に振った。
カノンは聖母の像を見つめて「祈り続ければ必ず答えが見えてくる」と言って祈りを捧げた。
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