第一話・転生先は悪役令息

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*** お祈りする時間はあっという間に過ぎ去り、陽が落ちる前に帰る事にした。 カノンには、いろいろと頼りっぱなしで感謝しかない。 教会の前までカノンと一緒に来て、少し前に出たところで足を止めた。 後ろを振り返ると、カノンが俺を見送るために立っていた。 どうしたらいいのか今は分からない、だけどカノンと知り合いになれて良かった。 カノンがいなかったら、きっと俺は諦めていたかもしれない。 カノンはずっと俺とまっすぐ向き合って話してくれた。 だから、俺も本当の気持ちを隠さずカノンと接したい。 それが、人の心に触れる攻略というものなんだと思う。 そういえば、カノンと自己紹介をしていない事を思い出した。 俺はミッシェルのプロフィールでカノンを知れたが、カノンはきっと俺の名を知らない。 おもちゃをいろんな人に見せる時に、自己紹介をして回った事はない。 周りの人達は、俺の家が有名な金持ちだから名前を知っているだけだ。 カノンもそうかもしれないが、自己紹介は始まりに必要だ。 「俺の名前、フォルテって言うんだ」 「私はカノン、この教会に住んでいる」 「また、教会に来てもいい?」 「祈りを捧げる者は誰だろうと拒んだりはしないよ」 カノンの言葉に、心からの笑みを向けた。 俺の笑みにつられるように、カノンの表情も柔らかくなる。 大きく手を振ってカノンと別れて、自分の家に向かった。 もう外には子供達はいなくて、酒場の灯りが街を照らしていた。 家に帰ると、当然のように母さんに頭の包帯の事を聞かれた。 周りにどう思われてるか、心配掛けるから母さんには言えない。
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