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お祈りする時間はあっという間に過ぎ去り、陽が落ちる前に帰る事にした。
カノンには、いろいろと頼りっぱなしで感謝しかない。
教会の前までカノンと一緒に来て、少し前に出たところで足を止めた。
後ろを振り返ると、カノンが俺を見送るために立っていた。
どうしたらいいのか今は分からない、だけどカノンと知り合いになれて良かった。
カノンがいなかったら、きっと俺は諦めていたかもしれない。
カノンはずっと俺とまっすぐ向き合って話してくれた。
だから、俺も本当の気持ちを隠さずカノンと接したい。
それが、人の心に触れる攻略というものなんだと思う。
そういえば、カノンと自己紹介をしていない事を思い出した。
俺はミッシェルのプロフィールでカノンを知れたが、カノンはきっと俺の名を知らない。
おもちゃをいろんな人に見せる時に、自己紹介をして回った事はない。
周りの人達は、俺の家が有名な金持ちだから名前を知っているだけだ。
カノンもそうかもしれないが、自己紹介は始まりに必要だ。
「俺の名前、フォルテって言うんだ」
「私はカノン、この教会に住んでいる」
「また、教会に来てもいい?」
「祈りを捧げる者は誰だろうと拒んだりはしないよ」
カノンの言葉に、心からの笑みを向けた。
俺の笑みにつられるように、カノンの表情も柔らかくなる。
大きく手を振ってカノンと別れて、自分の家に向かった。
もう外には子供達はいなくて、酒場の灯りが街を照らしていた。
家に帰ると、当然のように母さんに頭の包帯の事を聞かれた。
周りにどう思われてるか、心配掛けるから母さんには言えない。
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