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カノンを傷付けたくはないのに、振り下ろす腕は止まらない。
肩に剣が刺さり血が溢れてきて、カノンの身体能力なら避ける事も出来た筈だ。
それでも、避ける素振りはなかった。
俺との距離がゼロになる。
腹部にじんわりとしたものが広がっていく。
息が出来ない、痛い…俺、死ぬのか?
今の俺じゃないのに、まるで俺のように感じた。
「神は貴方を許さない、貴方は多くの人の命を奪った」
「…ぅっ、ぐっ…」
「私も神ではない、人を殺める行為は貴方と変わらない……救われる命が一つでもあるなら、私は悪魔にもなれる」
俺は最後の力を振り絞り、抵抗するようにカノンに手を出そうとしていた。
その時、教会が眩い光に包まれた。
まるで神が降りてきたかのように神々しい光だった。
雷が落ちて、カノンの剣に力を与えた。
そのまま俺の身体は焼けていく。
カノンが俺を殺す覚悟が見えた。
聖職者なのに、悪魔になる覚悟は半端な気持ちではなれない。
最後に見たのは、カノンに駆け寄る女性がいた。
黒髪の綺麗な見知らぬ子、あの子がカノンの好きな人か。
俺は、この日で二度目の死を経験した。
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