第一話・転生先は悪役令息

40/50
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
カノンを傷付けたくはないのに、振り下ろす腕は止まらない。 肩に剣が刺さり血が溢れてきて、カノンの身体能力なら避ける事も出来た筈だ。 それでも、避ける素振りはなかった。 俺との距離がゼロになる。 腹部にじんわりとしたものが広がっていく。 息が出来ない、痛い…俺、死ぬのか? 今の俺じゃないのに、まるで俺のように感じた。 「神は貴方を許さない、貴方は多くの人の命を奪った」 「…ぅっ、ぐっ…」 「私も神ではない、人を殺める行為は貴方と変わらない……救われる命が一つでもあるなら、私は悪魔にもなれる」 俺は最後の力を振り絞り、抵抗するようにカノンに手を出そうとしていた。 その時、教会が眩い光に包まれた。 まるで神が降りてきたかのように神々しい光だった。 雷が落ちて、カノンの剣に力を与えた。 そのまま俺の身体は焼けていく。 カノンが俺を殺す覚悟が見えた。 聖職者なのに、悪魔になる覚悟は半端な気持ちではなれない。 最後に見たのは、カノンに駆け寄る女性がいた。 黒髪の綺麗な見知らぬ子、あの子がカノンの好きな人か。 俺は、この日で二度目の死を経験した。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!