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俺が手に入らなかったもの…それが恋愛なのか。
裏切られたとはいえ、友人はいたから手に入れる事が出来なかったとは言えない。
偽りでも、友人なのは変わりない。
ミッシェルは「君を救う気持ちに偽りはないよ」と言っていた。
このままミッシェルがいなかったら、俺は本当に友人関係のまま殺されていたのかもしれない。
カノンがそんな事をする筈はないと、まだ少しそう思う気持ちは消えていない。
だけど、俺が見たカノンもそういう事をするカノンではなかった。
俺が世界の修正に負けて、悪役となった瞬間にカノンはきっとあの時のように俺を殺すだろう。
「もしかして、子供の頃…皆に嫌われたのも…」
「普通、嫌なものを見せても悪意がないならあそこまで嫌われると思う?」
「……おれ、は…」
ゲームが始まる前に、きっとまた悪役になる修正が始まる。
俺の知らないところで、俺が悪さをしている。
言葉は通じない、通じるのは行動だけだ。
あの時俺は、殺されて何を思ったんだろう。
この気持ちからして、憎しみのまま死んでいったんだ。
そんな結末嫌だ、死ぬなら人生の悔いがない死に方をしたい。
ミッシェルの姿がだんだん遠くなっていき、再び暗闇に包まれた。
最後に聞こえた言葉は、はっきりと脳内に焼き付いている。
「信じられるのは自分の行動だけ、世界がゲーム通りに進む道を用意するなら外れる勇気も必要だよ」
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