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あの時のカノンから見た俺は、恐ろしい顔をしていたんだろうか。
お互い憎しみ合って殺し合っていたんだから当たり前だ。
このままじゃダメだと、カノンをまっすぐ見つめた。
一瞬また大人のカノンと重なって見えたけど、それでも負けじと穴が開きそうなほど見ていると、いつものカノンが見えた。
心配そうな顔をさせてしまって、申し訳ない気持ちになる。
「フォルテ、なにがあった?」
「…ごめん、何でもない」
「……」
「本当に、ごめん」
これじゃあカノンだって、納得なんて出来ないよな。
それでもカノンに謝る事しか出来ない。
夢を見てカノンに殺されたなんて言ったら、いい顔をするわけがない。
ゲームの話なんて、もっとカノンには分からない話だ。
ミッシェルという神が脳内にいるなんて言ったら頭が可笑しくなったとしか思えない。
何も言えない、この感情は墓場まで持っていくと決めた。
今日はカノンに帰ってもらい、部屋に戻ってきた。
久々に俺に会いに来てくれたのに、心配するカノンを追い返すような事をしてしまった。
しかも、何もしてないのに怯えて…カノンにとって嫌な気分になるよな。
ベッドの上に乗って、膝を曲げて小さくなる。
大人のカノンを忘れたいのに、脳内に焼き付いてはなれない。
今のカノンの笑顔を思い出して、塗り替えようとする。
明日、俺から会いに行って謝ろう。
カノンに酷い事をしてしまったなら、謝るべきだ。
簡単に許してくれなくても、償い続ける…俺がいつもやっている事だ。
悪役になりたくないと思っても、感情だけが一人で勝手に暴走する。
ミッシェルは、俺にどうしてトラウマを植え付けるんだ。
どうせなら、カノンと出会った幸せな日々を思い出させてくれたら平和だったのに。
俺が友達で幸せだと思っているから、怒ったんだ。
もし、友達のままだとまた違った結末なんだろう。
友達だから、道を踏み外したら俺を止めるためにカノンは俺と戦うのかな。
俺に真剣に向き合ってくれたカノンなら、きっとそうする。
その結果、きっと俺とカノンは心も身体もボロボロになる。
誰が好き好んで友達と戦う事を望むんだ、優しい人ほど傷付きやすい。
俺がそうしたくなくても、世界が俺を悪役にするとミッシェルは言っていた。
俺達登場人物は、神様の手の上で転がされている。
本当に、それこそゲームのシナリオと選択肢しか選べないロボットだ。
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