第一話・転生先は悪役令息

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怒りを静めろ俺、また一人で部屋で怒鳴ると母さんや執事に心配掛けてしまう。 もう二度とミッシェルに褒め言葉は言わない事にした。 俺の考えている事も分かってたら、ミッシェルも企みに気付いていたのかもしれない。 でも、俺の声は口にしないとミッシェルに届かない。 ミッシェルの事だから、俺が困るからわざとやっていると疑ってしまう。 それとも脳内は聞こえないのか、これこそ神のみぞ知るって事か。 どうせ聞いても答えてくれないのは分かりきってるから諦めた。 自分でやらないと攻略は出来ないって事だと思う事にした。 俺が自分で考えて、俺の行動がきっと意味があるんだ。 ただ謝るだけじゃ、カノンは許してくれるかもしれない。 でも、それはカノンの優しさに甘えているだけでそれではダメだ。 俺がした事なら、俺がちゃんとしないと反省してると分からない。 言葉だけではなく、謝罪もちゃんとカタチにしないと。 部屋を飛び出して、厨房に向かうと母さんとメイドさんが夕飯を作っていた。 お腹が空くほどいい匂いがする、これはお肉のスープなのかな。 夕飯を見にきたわけじゃないとすぐに我に返って、母さんのところに行った。 母さんに説明して、頷いてくれた。 カノンのために、手作りのクッキーを作って会いに行こうと考えた。 料理なんて、生前に自炊していた時以外やっていなかった。 クッキーは生前も作った事がなく、この世界の食材は何一つ分からない。 母さんに手伝ってもらいながら粉を混ぜて、生地をこねた。 「食べさせたい相手の事を想いながら作るのよ」 「…想いながら…カノンに食べてもらえますように」 生地を伸ばして、型を手に取る。 どれもハートの形をしている。 ハートのクッキーをいきなり貰ってもカノンは困惑するよな。 腹に入れたら形なんて関係ないか、そのくらいカノンが気にするとは思えないし。 初めてにしてはよく出来たクッキーを見つめて、カノンが喜んでくれたらいいなと歪なクッキーを一つ口に入れた。
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