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翌日、教会の前で足を止めた。
一日で落ち着いたから、もう大丈夫だ。
俺がカノンにあんな顔をさせなければいい事に気付いた。
カノンは笑顔が一番似合うんだ、俺だけじゃなくて皆そう思ってる。
クッキーの入った袋を優しく握りしめて、教会の扉を開けようとした。
会ったらなんて言おうかな、と脳内でシュミレーションしていた。
謝る前に、俺に会いに来てくれたんだからお礼を言おう。
ガシャンと大きな音を立てて、扉は微かに揺れただけだった。
いつもなら誰でも入れるように開いているのに、硬く閉ざされていた。
こんな事、今までなかったのに…
不安になって、誰かいないか探した。
裏側に回ってみると、庭を掃除しているシスターさんがいた。
誰かがいる事に、こんなに胸を撫で下ろす事があるんだな。
俺に気付いたシスターさんは、子供の俺にも頭を下げた。
つられるように、俺もシスターさんに頭を下げて近付いた。
「申し訳ございません、今日のお祈りはもう終わってしまいまして…また明日の朝に…」
まだ昼前のこの時間にもうお祈りが終わったのか?
「あ、あの!なにかあったんですか?」
「……それはちょっと」
シスターさんはなにかを隠している様子で、申し訳なさそうにしていた。
カノンに会いに来たんだけど、今日は無理そうだ。
せめてクッキーだけ渡して帰ろう、伝言したらカノンに届けてくれるかな。
クッキーをシスターさんに差し出そうとしたら、その前にシスターさんが口を開いた。
「カノン様のご友人の方ですか?」
「はい、フォルテって言います」
そういえば、名前を名乗るのを忘れていたと今さら気付いた。
俺の名前を聞くと、シスターさんの顔が明るくなった。
でもシスターさんはすぐに顔を暗くしてしまった。
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