第一話・転生先は悪役令息

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翌日、教会の前で足を止めた。 一日で落ち着いたから、もう大丈夫だ。 俺がカノンにあんな顔をさせなければいい事に気付いた。 カノンは笑顔が一番似合うんだ、俺だけじゃなくて皆そう思ってる。 クッキーの入った袋を優しく握りしめて、教会の扉を開けようとした。 会ったらなんて言おうかな、と脳内でシュミレーションしていた。 謝る前に、俺に会いに来てくれたんだからお礼を言おう。 ガシャンと大きな音を立てて、扉は微かに揺れただけだった。 いつもなら誰でも入れるように開いているのに、硬く閉ざされていた。 こんな事、今までなかったのに… 不安になって、誰かいないか探した。 裏側に回ってみると、庭を掃除しているシスターさんがいた。 誰かがいる事に、こんなに胸を撫で下ろす事があるんだな。 俺に気付いたシスターさんは、子供の俺にも頭を下げた。 つられるように、俺もシスターさんに頭を下げて近付いた。 「申し訳ございません、今日のお祈りはもう終わってしまいまして…また明日の朝に…」 まだ昼前のこの時間にもうお祈りが終わったのか? 「あ、あの!なにかあったんですか?」 「……それはちょっと」 シスターさんはなにかを隠している様子で、申し訳なさそうにしていた。 カノンに会いに来たんだけど、今日は無理そうだ。 せめてクッキーだけ渡して帰ろう、伝言したらカノンに届けてくれるかな。 クッキーをシスターさんに差し出そうとしたら、その前にシスターさんが口を開いた。 「カノン様のご友人の方ですか?」 「はい、フォルテって言います」 そういえば、名前を名乗るのを忘れていたと今さら気付いた。 俺の名前を聞くと、シスターさんの顔が明るくなった。 でもシスターさんはすぐに顔を暗くしてしまった。
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