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俺がカノンに嫌われたと思っているのと同時に、カノンも俺に嫌われていると思い込んでいたみたいだ。
俺が勝手にゲームのカノンと重ねただけなのに、カノンに不安な思いをさせてしまった。
こんなんじゃ、友達だって胸を張って名乗れない。
ベッドから立ち上がってカノンの前に立った。
「嫌いなんかじゃない!カノンの事、大好きだよ!」
「だい…すき」
「病気で何も食べられないかもしれないけど、クッキー食べれる?カノンのために作ったんだ」
「それは嬉しいけど、病気って何の事?」
クッキーをカノンが受け取ってくれたけど、不思議そうに俺を見ていた。
俺はシスターに言われた事をそのままカノンに伝えるとため息を吐いていた。
どうやらシスターは大袈裟に騒いでいたようだ。
何事もないならそれでいい、ただ倒れた事と食事をしていないのは本当だ。
腹の足しにはなると思うけど、カノンがハートのクッキーを見つめていた。
小さく「ハートだ…」と呟いていて、「友達として好きのハートだよ!」と説明した。
いきなり俺がハートなんて送ったらさすがに気持ち悪いと思われる。
あの悲劇を体験しないために、俺はカノンを攻略するつもりだ。
いくらヒロインと結ばれても、あんな顔をカノンにさせたくない。
今はカノンも俺を友達だと思っているからゆっくり関係を進めていきたい。
その先がどうなるのか分からないけど。
カノンは俺にも分けてくれて、クッキーを一口食べた。
口の中に甘さが広がっていき、自分で作ったけど友情の味なんだと感じた。
「ありがとう、フォルテ…私の友達でいてくれて」
「俺こそ、カノンと出会えて良かった…その気持ちはずっと変わらないよ」
「……うん、僕もだよ」
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