第ニ話・学院で因縁ハプニング

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そこで、私はフォルテを失うのが怖いんだと気付いた。 その感情の名は分からない、初めて抱いた感情だった。 混乱する頭の中で、これだけははっきりと分かる。 その感情は私が抱いてはいけない欲の塊であった。 会いたい欲とずっと傍にいたいという欲をフォルテが知ってしまったのかもしれない。 だから、私を拒絶したのだろうか。 考えれば考えるほど、気持ちが落ち込み…食事も喉を通らなかった。 とても心配を掛けたシスターには悪い事をしてしまった。 初めての辛く苦しい感情に、私自身が付いていけなかった。 これが、聖職者として禁じられた感情そのものだろう。 恋愛感情そのものがダメなのではない、聖職者でも家庭を築いている人はいる。 中途半端の浮ついた感情がダメなんだ、一生添い遂げる人物にしか抱いてはいけない。 覚悟が出来ない子供のうちに恋愛はしてはいけない。 自分から相手を好きになってはいけない、あくまで自分は全ての人間を愛さなくてはいけない。 それは家庭を築いていても、家族のように周りの人間も愛す事を当たり前だと思わなくてはいけない。 部屋で塞ぎ込んでいた時、私には無理だなと思った。 全ての人をフォルテと同じように好きになれるかと聞かれても自信がない。 フォルテが傷付けられた時、私は周りの人間に嫌悪感を覚えた。 いろんな性格の人間がいるのは知っている、人それぞれだから押し付けてはいけないのも分かっている。 それでも私は、フォルテを傷付けた人達を許す事は出来ない。 フォルテが会いに来てくれて、誤解だったようで仲直りした。 良かったのか悪かったのか分からないが、私の欲をフォルテは知らない。 それでいい、フォルテが友人だと望むなら私はフォルテの友人であり続ける。 聖母像の前に立ち、瞳を閉じて無心で祈りを捧げる。 私を、神は許してはくれないだろう…周りには隠せていても神には隠し事は出来ない。 「カノン!迎えに来たよ!」 「…今行く」 後ろからフォルテの声が聞こえて、聖母像に背を向けてフォルテのところに向かった。
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