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でも、俺はユリウスをわざと突き落としていない。
記憶を完全に思い出したから、間違って覚えている筈がない。
俺にとって、心に深く残っている記憶だ…その記憶に偽りはない。
ユリウスはとんでもない誤解をしている、あの時俺はユリウスを助けようと手を伸ばしていたんだ。
それが突き落としたように見えたのかもしれないが、なんか変だ。
俺が一瞬蛇に気を取られた時、いったいなにがあったんだ。
「俺は突き落としてない!」
「じゃあ誰がやったんだよ!」
「…それは、俺にぶつかってきて」
「そんな言い訳で俺が納得すると思ってるのか、バカにしてるのか?」
「違う!本当に俺じゃ…」
ユリウスが舌打ちして、俺の方に向かって歩いてきた。
そのまま俺の胸ぐらを掴もうと、腕を伸ばしてきた。
俺自身もよく分からない状態で、ユリウスに殴られると思い目を強く瞑った。
逃げる事は考えていなかった、誤解を解くまで逃げたくない。
寸前でカノンがユリウスの腕を掴んで、俺まで届かなかった。
ユリウスはカノンの存在に今気付いたのか、カノンを睨んでいた。
助けてくれたカノンにまでユリウスの怒りが向いたら大変だ。
「この人は関係ないから!」と言おうとしたが、カノンはもう片方の指を自分の唇に当てていた。
なにか考えがあるのかもしれないと、口を閉ざした。
「その話は後にして、もう誰もいないけど遅刻するよ」
そういえば、浜辺の方向にはもう人はいなかった。
話し始めた時から、最後の方だったけど人は見えていた。
時計がないから、話に夢中で日が暮れたら大変だ。
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