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ユリウスの幼馴染みもユリウスの肩を掴んでいる。
今この場でユリウスを止められるのは、彼しかいない。
ユリウスがカノンの腕を振り払い、俺達の横を通り行ってしまった。
最後に俺を睨みつけていた顔が脳内に焼き付いている。
息をするのを忘れていたのか、息を荒く吐き出した。
カノンはユリウスが去った方向を見つめていて、歩き出した。
「フォルテ、行こう」
「…うん、あ…それ、俺のバッグ」
「早く行こう」
カノンは俺のバッグを掴んで、先に歩いて行った。
さすがに、俺の足が遅いと思ったからだろう…迷惑掛けてごめんなさい。
カノンを追いかけるように俺も追いかけて、横に並ぶ。
小さな声で謝ると、カノンは「私とフォルテの仲だ、気にしないでくれ」と言ってくれた。
荷物が少しでも軽くなるように、俺とカノンの荷物の下を持ち上げた。
ちょっとくらいは、俺の力が役に立てればいいな。
ユリウスの言っていた言葉を思い出して、なんであんな事を言ったのか気になった。
落ち込む俺にカノンは優しい声を掛けてくれて、思っている事を話した。
ユリウスをわざと突き飛ばしていない事と、ユリウス達をよく見ていなかった事を伝えた。
あの場にいたのは俺を含めて四人だが、疑わしいのは俺だけだ。
幼馴染みの男の子と女の子とは仲が良さそうだったから、突き落とす事なんてしないと思う。
そもそもあの場で突き落とされたというなら、悪意以外にない。
もしかして、あの場にもう一人いたという事は考えられないのか?
湖は、木に囲まれた場所にあるから隠れようと思ったら出来る。
いったい何のためにそんな事をするんだ?ゲームでも彼をそこまで恨む人はいなかった。
恨むなら俺相手か、俺を陥れるためにわざとユリウスを湖に突き落とした?
「なんでそこにいただけでフォルテが突き落としたって勘違いしたんだろうね」
「俺が元々嫌いってのもあると思うけど、俺がユリウスが落ちそうになっているのを見つけて手を差し伸ばしたからそう見えたのかも」
「誰か他に見ていたらいいけど」
この学院にいるのは、ユリウスと幼馴染みだけだ。
女子部にあの女の子もいるかもしれないけど、確認のしようがない。
あの幼馴染みは、俺達を見ていた…なにか知っているかもしれない。
もし知っていたら、疑問も同時に出てくる事になる。
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