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講堂での入学式は何事もなく終わった。
ユリウスとも離れた場所にいたから、さっきのように睨みつけられる事はなかった。
良かったのか、このままじゃいけないと思う自分がいた。
でも、初日から先生に目をつけられるわけにはいかない。
幸いな事に、学院の先生達はあまり孤島から離れないのか、俺の事を知らなかった。
ユリウス本人も、俺のせいでそうなるのは不本意だろう。
これで今日は進展なしで終わるんだと思っていた。
教室に戻る前にユリウスに腕を掴まれて、引っ張られるまでは…
俺の事を気付いた生徒が何人かいたが、助ける人なんて誰もいない。
講堂の裏庭に突き飛ばされて、派手に転んで新品の制服が汚れた。
なにかされるとは思っていたけど、まさか今だとは思わなかった。
立ち上がろうとしたら、その前にユリウスに胸ぐらを捕まれて無理矢理立たされた。
壁に背中を思いっきり叩きつけられて、痛みで顔を歪める。
「ご、めん…ユリウス…俺が蛇を捕まえようとしたから」
「蛇蛇うるせぇんだよ、お前が謝るのはそこじゃねぇだろ!謝っても許さねぇけど」
「突き飛ばしたのは俺じゃない!他に誰かいたのかもしれない」
「誰がいるって言うんだよ!あの場には俺とラウルとスピカだけで、お前以外であんな事をする奴はいない!」
ラウルはあの幼馴染みの男の子の名前は分かっていた。
見知らぬ女の子がゲームの主人公であるスピカだとは思わなかった。
だとしたら、やっぱりもう一人誰かがいたとしか思えない。
怪しいところがないか、もう一度ちゃんと考えるんだ。
なにか怪しいところはなかったのか?しゃがんでいたから、なにかを見たかもしれない。
記憶を思い出していたら、ユリウスは「どうしても認めないならもういい」と静かに呟いた。
頬に衝撃を感じて、勢いで倒れて地面に膝を付いた。
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