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今は俺への憎しみに囚われて常識が欠落してしまっている。
誰かがいればきっとユリウスも冷静になってくれる筈だ。
ゲームでは面倒くさがりキャラだったのに、俺より体力がある。
ユリウスが立っている横を通り過ぎるわけにもいかず、講堂を一周回って校舎に行くからかなりの距離を走る事になる。
このままだと校舎に行く前に追いつかれてしまう。
気が逸れる話題、なにかないだろうか…少しだけでいい。
「ユリウス!本当に俺じゃないんだって!あの時あった事一緒に考えよう!」
「うるさい!お前のせいで俺がどんな日々を送ったか……俺と同じ目に遭って湖に溺れて死ね!それか殴られて死ね!」
「ユリウスは溺れてないじゃん!」
浅い底の湖だから、小さな子供でも顔は出るから溺れない。
ユリウスは溺れていなかったが、突き飛ばされたらそのくらい怖い思いをしたのかもしれない。
俺が突き飛ばしたわけではないが、心が苦しくなった。
ユリウスの視界が外れて、近くにあった建物に身を隠す事にした。
閉まっていたら終わっていたが、扉はすんなりと開いた。
薄暗くてよく見えないが、物が散乱しているのは分かる。
倉庫のようで、物を掻き分けて奥に向かって進む。
その時、物に足が引っ掛かり大きな音を立てて俺の上に倒れた。
重くて押し潰されそうだったが、足音が近付いてきたから物を退かす手を止めた。
倉庫の扉を止めて、ユリウスが入ってくる気配がした。
あんなにピリピリした殺気を放っていたら、見なくても分かる。
俺はなるべく息を潜めて、動かないように気配を消した。
俺は動いていないのに、物がガタガタと動いてびっくりして動きそうになる。
心臓のうるさい鼓動だけで、気付かれてしまいそうになる。
積み上げられた物の中から手が出てきて、誰かが這い出てくるところはホラーでしかない。
叫びそうになってしまい、慌てて両手で口を塞いだ。
あれ、このゲームってホラーゲームだったんだっけ。
狭く静かな倉庫の中で、ユリウスの息遣いと声が響いた。
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