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「うーん、そうだっけ?」
「覚えてないのか?」
「あの時蛇にびっくりして腰を抜かしてたからユリウスまで見てないよ」
「……それは、ごめん」
「ユリウスがフォルテがーフォルテがー言うからそうかと思った」
ラウルはケラケラ笑っていて、また倉庫のガラクタを物色し始めた。
ラウルも知らないなら残るはスピカだけど、俺の記憶ではスピカもラウルのようにびっくりしていた。
ユリウスまで見ているかと言われたら微妙なものだ。
それに女子校舎に入るのは簡単ではなく、友人でもない俺にスピカが会ってくれるわけがない。
何も手がかりが見つからないまま、またふりだしに戻ってしまった。
邪魔して悪かった、と言って倉庫を出ようとした。
外の方で足音が聞こえて、慌てて奥の方に向かった。
棒のようなものに足が持っていかれて、またまた転んだ。
口を閉ざして耳をすまして、相手の行動を慎重に探る。
足音と共に笑い声が聞こえてきて、しばらくすると去っていった。
どうやらユリウスではなく、知らない人だったようでホッと胸を撫で下ろす。
もう、さすがにユリウスはいないよな…俺の心臓が持たない。
「フォルテくんってば、大胆なんだから」
「え?……あああごめんっ!!」
下の方からラウルの楽しそうな声が聞こえて、下の方を向いた。
ラウルを押し倒している格好になって慌ててラウルから離れようとした。
その瞬間、カシャという機械音と目の前が眩しくなった。
ラウルの方を見ると、俺の前でなにかを構えていた。
四角い箱のような機械から一枚の紙が出てきた。
ラウルが手にする前に、それを掴んでマジマジと見つめる。
これって、もしかして写真?この世界にも写真があるのか?
ぼんやりとしか映らない紙は、だんだんとはっきりと見えてきて写真に変わった。
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