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「凄いよねぇ、こんなものまで昔の天才達は開発するんだからさ」
俺の手から写真を取って「間抜けな顔ー」と言っていた。
人の顔を勝手に撮っておいて、酷い言われようだ。
俺から写真を奪うと、手をヒラヒラと振っていた。
「出て行け」って事だろうな、言われなくても行くよ。
倉庫から出ると、空は夕陽に染まっていて長居し過ぎたんだと分かる。
もうさすがにユリウスも諦めただろうと、寮に向かって歩き出した。
新入生のために、あちこちに寮への看板が設置してあり迷う事はなかった。
たどり着いた寮は大きな洋館のようで、ファンタジー丸出しだなと苦笑いする。
扉の横で誰かがしゃがんでいるのが見えて、近付くと人影がはっきりしてきた。
「カノン」
「っ、フォルテ!」
下を向いていても、その人がカノンだと分かり声を掛けた。
勢いよく顔を上げたカノンは、俺のところに駆け出した。
「どうしたんだ?」と言おうとしたが、遮られるように抱きしめられた。
服越しでも、カノンが長時間ここにいた事は分かる。
冷えている身体を温めるように、背中に腕を回して抱きしめ返した。
「カノン、ごめん…心配掛けた」
「今朝の事があったのに、フォルテを一人にした私が悪いんだ」
「カノンは悪くないって、クラスも違うしずっと一緒は無理だって」
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