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カノンの抱きしめる力が少しだけ強くなった気がした。
外で男同士が抱き合うと、寮に帰ってくる人の注目の的になっていた。
寮の中に入って、とりあえず暖まろうと思った。
寮監室の前に通ると、寮長さんがいて名前を伝えると鍵を渡してくれた。
寮は大部屋で6人部屋だから、カノンとも同室になる。
他に誰かいるか分からないけど、カノンがいるなら大丈夫だ。
部屋に入ると、他の人に聞かれるかもしれないから談話室に移動した。
談話室なら、皆それぞれの時間を楽しんでいるから俺達の事を気にする人はいないだろう。
談話室には数人しかいなくて、ほとんど上級生みたいだ。
同級生は皆新しい部屋に行っているのかな、何となくホッとした。
談話室の隅にある椅子に座って、カノンが小さくため息を吐いた。
「何をしてたのか聞いても?」
「その、新入生歓迎会の時にユリウスと会って」
「なにかされたのか!?」
カノンが珍しく声を荒げていて、びっくりして目を丸くする。
すぐに「すまない」と謝られて、びっくりしただけで大丈夫だと言った。
ユリウスに殴られた時に切れた口内は、血が止まっているから大丈夫だとは思う。
カノンが俺の袖をジッと見つめていて、すぐに左手で隠した。
黒い制服だからバレないと思っていたけど、シャツは白いから口を拭った時に少し付いていたのかな。
ユリウスに追われて、いろいろあったからシャツまでは見ていなかった。
カノンはなにかに気付いているけど、俺が話してくれるまで待ってくれた。
「ユリウスに殺されかけて、倉庫に隠れてた」
「それは大丈夫と言わない」
「でも、誤解を解く事しか回避出来ないから」
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