66人が本棚に入れています
本棚に追加
「…関わらないだけでは、彼を見たら無理そうだね」
ユリウスを突き落とした人物をラウルは知らないと言った。
他に知っていそうな人に心当たりが全くない状態だ。
ユリウスは、本当に俺を見たのか?ちゃんと見たのか?
見ていたら、俺が突き落としたわけではない事も分かりそうなものなんだけどな。
ラウルのように、曖昧な記憶が俺への恨みで変わっていたとすれば証拠を出せばどうにかなる。
でも、なにが証拠になるんだろう…かなり昔の話だから当時のものは何も残っていない。
それに、ユリウスが認める証拠じゃないと意味がない。
話すだけなら、まともな会話が出来ない今無理だ。
カノンは「私なら話を聞けるかもしれない」と言った。
確かにカノンはユリウスとの因縁はないが、俺の友人だと一緒にいた時に知られている。
それだけで、ユリウスにとっては敵のようなものだ。
俺の時のように暴力的にならない保証は何処にもない。
別々に船を降りていたら、気付かれていなかっただろうけどもしも話をしても仕方ない。
カノンになにかあったら、俺こそ冷静でいられなくなる。
俺のために言ってくれるのは嬉しいけど、カノンは悪役出身の俺とは違うから傷付けられたら悲しい。
「カノンも危ない事しないでよ、他の方法考えよう」
「…そう言っても、過去に戻れる力でもあれば話は別だけど」
この世界はファンタジーだけど、俺や多分カノンもそんな力はない。
どうせ悪役なら最強設定でもあれば良かったけど、フォルテは悪魔族に憧れていたが魔法を使う事が出来なかった。
持って生まれた才能だからどうしようもないけど、フォルテは才能がないのを周りのせいにして暴れていた。
不思議な力を使える人はいるけど、魔法使いが当たり前の世界じゃないんだから誰のせいでもないんだけどな。
カノンの言葉のおかげで、俺にしか出来ないある事を閃いた。
勢いよく立ち上がると、カノンは目を丸くして驚いていた。
カノンに「ちょっとトイレ行ってくる!」と言って、談話室を出た。
最初のコメントを投稿しよう!