第ニ話・学院で因縁ハプニング

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一人が良かったけど、結局カノンもユリウスにまた連れていかれるからと付いて来た。 独り言を聞かれるのは恥ずかしいんだけど、仕方ない。 確かにユリウスも同じ寮内にいると、またなにかされるかもしれない。 さすがに中まで一緒はカノンも遠慮して、誰もいない事を確認してから俺だけ中に入った。 こそこそ入るのは流石に可笑しいと思ったのか、カノンは「大丈夫か?」と聞いてきたから頷いた。 ユリウスがいないか確認しているだけと言えばそう聞こえるが、誰にもトイレに入って来てほしくない。 そのために、あまり利用が少ない三階の奥のトイレまで来たんだ。 一番奥の個室に入り、便座に座って小さな声でミッシェルを呼んだ。 トイレをしに来たのではなく、ミッシェルと話すために来た。 俺しか声が聞こえないから、カノンといる時は誤魔化すのが大変だ。 気分屋で無視をする事が多いが、今は俺の一大事だからお願いだ。 実物がいないから、無理矢理引っ張り出す事が出来ない。 ミッシェルに届くのは言葉だけで、その言葉で無理矢理引っ張り出すしかない。 「ミッシェル、おーいミッシェル」 『何?そんなに慌てて』 しつこく名前を呼べば、ミッシェルは出てきてくれると考えた。 何度目かでやっとミッシェルに繋がって、ミッシェルに俺とユリウスの過去を見せてほしいとお願いした。 俺は無理だけど、神様のミッシェルならなんだって出来る。 カノンの時は未来だったけど、未来が見えるなら過去なんて簡単だろ。 カノン達に見せるのは無理かもしれないが、そこで真相が分かれば証拠も見つけやすい。 俺に追体験させたんだから、これはダメとか言わないよな。 期待に満ちた俺の声はミッシェルの『無理』という声に打ち砕かれた。 そんなはっきりと…試してみないと分からないだろ。 ミッシェルは追い討ちをかけるように『無理なものは無理』とはっきり言っていた。 ミッシェルが見せる事が出来るのはゲームのシーンだ。 だからゲームの回想に出てきたスピカもいる幼少期の記憶も見れると思っていた。 ゲームの中では、フォルテが悪くないという真相はなかった。 当然だ、ユリウスとフォルテが敵対したきっかけだから。 それでも、回想シーンを映像で追体験出来れば良かったけど、ミッシェルがその気じゃないならどうする事も出来ない。 『見せる事が出来るのは結末だけだよ、ゲームで確認してね』 「こんなところで出来るか!!」 つい大きな声を出すと、トイレの中で慌てて走る音が聞こえた。 「大丈夫か!?フォルテ!」とカノンが声を掛けてきて、個室から出た。 ビックリさせてしまって、謝って一緒にトイレを出た。 もうミッシェルは何も出来ないと思おう、自分で何とかしてやる。 確か、入学早々に明日は学院生活初めての休日だった。
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