第ニ話・学院で因縁ハプニング

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腹が痛いと思っていて心配してくれるカノンの方をジッと見つめていた。 カノンと目が合って、すぐに逸らされてしまった。 あれ…? 「カノン、明日用事ある?」 「…特にないけど」 「俺に付き合ってくれる?」 俺の考えが分からないみたいだけど、頷いてくれた。 そろそろ大部屋に行こうと、カノンと一緒に向かった。 同級生だけではなく、上級生も一緒にいる大部屋で驚いた。 それぞれ、自分のスペースである二段ベッドの周りで過ごしていた。 俺達が来た事で、周りの視線は俺達に集まってきた。 俺の顔を見て、嫌そうな顔をする同級生達とカノンを見て嬉しそうに近付いてくる上級生達に注目される。 馴れ馴れしくカノンの肩に触れていて、びっくりした。 カノンの顔も無表情だけど、何処か不機嫌に見えた。 「こんな美人が同室なんて驚いたなぁ」 「新入生だよね、名前はなんて言うの?」 「カノン・セイレーンです、それでこっちが…」 「カノンくんかぁ、もっと仲良くなりたいな」 カノンの言葉を遮るように上級生達が言葉を被せた。 俺も自己紹介をしてみたけど「あー、はいはい」とあしらわれた。 上級生達には俺の存在すらいないもののようにしている。 カノンを三人の上級生で囲んでいて、心配になる。 確かにカノンは美人だけど、初対面でこれはどうかと思う。 後輩に敬語を使えとは言わないけど、流石に初対面の相手に対して失礼だろ。 上級生達の間から見えるカノンの顔は、嫌悪感で眉間に皺を寄せている。 カノンがこんな顔をするなんて、相当嫌なんだろう。 普段は誰にでも優しくて、あまり感情を表に出さない。 俺も、だんだん胸の奥がもやもやとした気持ちになってきた。 上級生の一人がカノンの髪に触れようとして、カノンの限界は爆発した。 「申し訳ございませんが…」 「俺、フォルテって言います!よろしく!俺達のベッドってあっちかな?」 俺は無理矢理上級生とカノンの前に割り込んで、カノンの腕を引いた。 そのまま上級生を掻き分けて、自分達のベッドのスペースに向かった。 カノンに上と下どっちがいいか聞くと、驚いたまま下を指差した。 じゃあ俺は上だね、寝相悪かったらごめんねと笑った。 さっきまでカノンの曇っていた表情が和らいで俺もホッとした。
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