第ニ話・学院で因縁ハプニング

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俺もすっかり存在を忘れていた上級生達が俺の肩を掴んで振り向かせた。 「おい待てよ!俺達はそっちの子と話してるんだよ!」 「そうですか」 「なんだその態度は!!」 カノンを奥にやって隠すと、さらに上級生の顔が怒りに満ちていた。 この上級生が卒業するまで、最低一年間は一緒の部屋なんだよな。 面倒だな…と考えていたらもう一人の同級生が恐る恐る声を出していた。 その声に上級生達は二段ベッドの上を見ていた。 同級生は「ソイツに関わらない方がいいですよ、ヤバい奴なんで」と言っていた。 俺の事を助けたわけではなく、自分にとばっちりがいかないようにしたいんだろうな。 心配しなくても、迷惑掛けるような事はしないから。 眉を寄せて怪しんでいる上級生達は俺の方を向いた。 ヘラヘラ笑っていたら、嫌そうな顔をしてそれ以上何も言わなかった。 その代わりに、同級生を下に降りてこいと言っていた。 俺の噂話を聞いているのか、内緒話を初めてしまった。 まさか、悪名がこんなところで役立つとは知らなかった。 この人達には、誤解だって言わなくていいか…カノンにまた失礼な事をしないためにも。 「カノンは俺と居れば、多分大丈夫だから」 「フォルテは大丈夫じゃない、なんであんな目を付けられる事をしたんだ」 「俺は元々目を付けられているし、嫌われ者だから今更誰かに嫌われても大丈夫だって!」 今さら何人に言われても構わない、この人達と仲良くしようとも思わない。 カノンは眉間に皺を寄せたまま、俺を見つめていた。 聞き取れるか、聞き取れないか分からないくらい小さな声で「大丈夫な筈ないじゃないか」と口にしていた。 カノンを守りたくてやった行動が、カノンに余計な心配を掛けてしまう結果になってしまった。 でもねカノン、俺は後悔してないよ…あのままだったらカノンが酷い事をされていたんだ。 俺がどんな実力があるか分かるまで、カノンには手を出さないと思うからそれで良かったと思っている。 さっき決めたベッドに荷物を置いて、カノンは下のベッドで荷物を開けていた。 もしカノンが寝ているところをなにかしようものなら、俺が許さない。 俺達を上級生達が見ている事に気付いていたが、何もしないならそれでいい。 自分のベッドに座り込んで、カバンから使う日用品を取り出した。 服はカバンの中に入れたままでいいか、プライベートスペースが小さいし。 カノンはカバンに入れていた小さな像の前でお祈りしていた。 俺も、像は持っていないからカノンの像を借りた。 目蓋を閉じて、手を合わせていつものようにお祈りをした。 ヤジのようなものが周りから聞こえてくるが、無心になるからすぐに何も聞こえなくなる。 その日、何事もなく一日が終わった。
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