第ニ話・学院で因縁ハプニング

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俺がユリウスの真似をするから、カノンは俺の真似をお願いした。 俺の真似といっても、そこに立っているだけでいい。 蛇に驚いて、どう湖に落ちたのか…本当に可能なのか確認したかった。 地面に落ちている棒を手にして、とりあえず雰囲気を作るために地面にS字を書いて蛇の代わりをした。 スピカの位置はユリウスの隣だったと、俺の横に丸を書いた。 ラウルは少しだけ離れた場所だから、ここかなと丸を書いて準備が出来た。 定位置に立つと、問題の湖との距離がよく分かる。 こうして見ると、少し離れているからやはり誰かが突き飛ばさないと無理だ。 俺達の近くには、人が一人くらいなら隠れそうな木がある。 さすがに草むらは誰かいたら分かりそうだ、小動物でもないかぎり。 「湖から離れているね」 「ここで蛇にびっくりして、逃げようとしたのかな」 突き落とされていない場合の事もいろいろ考える。 俺は、フラフラと歩いて湖のところに向かった。 湖の近くで足を止めた、それはないなと考え直した。 走ったのならそれもあり得るけど、俺が目を離したのは一瞬だった。 それに、俺が突き飛ばしたと勘違いするわけがない。 無意識ではなく、足を動かすのは自分の意思だからだ。 ユリウスが湖に落ちたのも、意味が分からなくなる。 じゃあ他に、他になにがあるんだ?やっぱり木の影に誰かがいたのか? 考えるのに集中しすぎて、カノンの声で我に返った。 気付いたら、身体が傾いていた。 湖に落ちて、頭から被って全身ずぶ濡れになっていた。 カノンは慌てて駆け寄り、手を差し伸ばしてくれた。 手を掴もうとした時、この光景はユリウスが見たものなんだと思った。 俺はユリウスを湖から引き上げようと手を差し伸ばした。 ユリウスは俺の手を掴んではくれなかったから、引き上げるものを取りに家に戻ったんだ。 それを見て突き落としたと思ったんだ、もし俺がユリウスなら勘違いするのも仕方ない。 俺の場合は、カノンが俺を突き飛ばそうとするわけないと思っているから勘違いはしなかった。 でも、俺とユリウスの関係は最初からよくはなかったから、勘違いが生まれた。 髪や服が濡れて重くなり、服を絞って少し軽くする。 ユリウス視点の俺の姿は何となく分かったが、誰が突き落としたのかは分からない。 あの場にいたのは、顔馴染みだけの筈だったから第三者はいなかった。 俺達がユリウスの方に向いていた隙に、驚いて走って逃げたのかもしれない。 だとしたら、証拠なんて何も残していないか…あの時ですら… 「大丈夫だったか?歩いていたらいきなり倒れたが」
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