第一話・転生先は悪役令息

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ドアノブを掴んで、酷い耳鳴りがして気分が悪くなった。 すぐにその気分も耳鳴りもなくなり、元に戻った。 「家出を引き止めているみたいだ、これも強制力?」 『君が話を聞かないからだよ』 脳内に何者かの声が響いて、周りを見渡してみても俺しかいない。 本当に俺の脳内の神様がいたのか?ラスボスとはいえ、俺は当て馬のようなものだ。 脳内に神様がいる重要なキャラクターじゃないのに、語りかける相手間違えた? 口には出さずにそう思っていたら神様のミッシェルは『自分をそんな過小評価しないで、君を救うために来たんだから』と言っていた。 やっぱりゲームの悪役でも裏設定が存在していたのか、知らなかった。 救うって、それは死なない方法を教えてくれるという事だろうか。 それ以外に考えられない、悪役になって世界を滅ぼしたら死なずに済むとかはやりたくない。 そんな野望はないし興味がない、それがあっても滅ぼす前に俺が死ぬ。 30攻略ルートをやった俺には分かる、フォルテは絶対にヘマして死ぬ。 フォルテの味方になる相手がいたのに、なんでいつも死ぬんだろう。 もしかして俺、なにかに騙されてはいないだろうか。 とりあえず、神様の話を聞かないと何とも言えない。 「どんな方法か教えてくれませんか?」 『君を殺す全ての攻略キャラクターを君が攻略する事が生きる道だよ』 「……はい?」 『このゲームはハッピーエンド恋愛ゲーム、恋人を殺すキャラクターはいないからね』 何を言っているのか分からず、口を開けたまま考える。 ここが恋愛ゲームなのは知っている、後日談が描かれている続編もやっていた。 確かにフォルテがいない世界は幸せで溢れていたから、殺伐としたキャラクターはいなかった。 むしろ、フォルテのせいでいろいろと事件を起こしたりしている。 フォルテが消えれば平和になるのは分かる、悲しいけど。 でも俺が攻略するの意味が分からない、攻略って恋愛って意味だよな。 女の子の攻略キャラクターはいただろうか、それとも俺がスピカを攻略するという事? そんな事したら、余計に攻略キャラクターに恨まれて死亡フラグが立ちまくる。 全然解決になっていない、やっぱり俺を悪役として散らせるために送られてきた刺客なのではないのか。 ミッシェルは俺の脳内にいるから、考えている事が筒抜けのようで呆れているようなため息が聞こえる。 『ゲームで君を殺す攻略キャラクターと恋愛すれば君の悩みは解決される』 新しい悩みを増やしそうな言い方で、解決出来るとも思えない。
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