episode.3

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 仕事終わり、女子社員たちの質問攻めから逃げるように職場を後にした私は一目散に本屋へと駆けていく。  いつもならば真っ先に漫画売り場に直行するところなのだけど、今日は女性向けの雑誌コーナーへと向かう。  そして、まず手にしたのはヘアカタログ。  今だってプライベート以外では手を抜いている訳じゃ無いけれど、もう少しウケのいい髪型に変えるべきか悩む。  そして、次に手にしたのはファッション雑誌。  しかもちょうど【彼のご両親に会う時のコーディネート】という特集が組まれているものだった。  ペラペラとページを捲って読み進めてみるも、ただ会いに行くのと結婚の挨拶ではちょっと違う。  それならばと、最後に手にしたのはウエディング情報誌。  これさえあれば結婚までの全てが分かると謳われている事もあって、私はそれを手にしたままレジへと向かい、雑誌のみを購入した。 (本屋に来て漫画コーナーにも立ち寄らない、雑誌だけを買って帰るなんて……初めてだ……)  しかも購入したのはウエディング情報誌で、結婚願望の無い私には一番縁遠いと思っていたもの。  そのまま帰ろうかと思ったのだけど、ついでだから服や小物類なんかを見ていこうと、駅ビルへ入った私は少しお高めのショップに入り、どんなシーンにも使えそうなアクセサリーやバッグを調達してから帰宅した。  お風呂に入り、髪を乾かしスキンケアを終えた私はベッドの上に横になりながら、買ってきた雑誌に目を通す。 「結婚って、本当に面倒だなぁ……やる事多過ぎ……」  元から結婚願望が無いせいか、全てが面倒に感じてしまう。 「結婚式とか……勿論やるよね。っていうか楓の方は色々付き合いもあるだろうし、親族も多そう……。嫌だなぁ……」  強いて言えば、挙式は身内のみのこじんまりとしたものがいい。注目されたりするのはあまり好きでは無いから。 「……今更だけど、やっぱり早まったかな……。いくら同じオタク同士だからって、楓みたいな御曹司との結婚は避けるべきだった……」  愛も無い、ただ趣味や考え方が似ていて、知らない仲でも無くて、結婚しても自分らしくいられる為に一緒になる。  言ってしまえば、利害一致の契約婚……みたいなもの。 「まあでも、面倒な恋愛をしないで結婚出来て、結婚した後も好きな事が出来るなら……多少の面倒には目を瞑るしか無い……よね」  雑誌に飽きた私は傍に置いてあったゲーム機を手に取ると、夕飯を食べるのも忘れてゲームに没頭していた。
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