episode.3

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 初めはお互い探り合いみたいな雰囲気もあったけれど、そんな空気を吹き飛ばしてくれたのは楓のお母さんだった。 「それにしても、楓がこんなに素敵なお嬢さんと御付き合いしているなんて驚いたわ。異性にはまるで興味が無いって思っていたから、お母さん安心しちゃった」  楓のお母さんは私と楓を交互に見ながら嬉しそうにそんな言葉を口にする。  身なりもピシッとしていて一見厳しそうな雰囲気を醸し出しているお母さんだけど、話してみるとそんな事は無くて、寧ろ気さくな感じで表情もコロコロ変わって可愛らしさすらある。  そして、それに便乗するようにお父さんも、 「本当にな。危うく見合いの話を進めるところだったよ。しかも実玖さんはうちの社員だと聞いているし、まさかの社内恋愛だという事にも驚きだったよ」  笑みを浮かべながらそう言うと、私と楓に柔らかい視線を向けてきた。  なんて言うか楓の両親て、見た目からもっとこうお堅い感じを想像していたのだけど全然違くて正直拍子抜けしたし、お父さんに至っては会社の社長としての顔は厳しいイメージを抱いていただけに、今目の前にいる人と社長が同一人物だというのは想像しがたいものがあった。  それから少しして料理が運ばれて来て、楽しく談笑しながら料理をいただいきつつ、お母さんから馴れ初めについての話をせがまれたので楓が職場に話した事と同じ内容を話して聞かせた後、「まあとにかく、こういう訳で俺は実玖と結婚するつもりだから」と言って楓が話を締め括った。  とまあ、こんな感じで楓のご両親への挨拶は終始和やかなムードで終わりを告げ、彼の言った通りご両親に気に入られたようで一安心。  まだ私の両親への挨拶が済んでいないので両家の顔合わせについては後日話し合う事にしてこの日はお開きになった。
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