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芸術を学ぶことは、貴族にとって社会的地位があると見せる象徴であり、若い芸術家を早くから支援して、人気が出た芸術家を専属とすることが理想とされていた。
そう、たとえ貧乏な農家の息子であっても、芸術家として認められれば、貴族になれる可能性もあり、遊んで暮らせるような大金を手にすることができる。
王都へ向かう間に、ロランの期待はどんどんと膨れ上がっていった。
王都にたどり着いたロランは、美術商の紹介で、若い芸術家を支援するために建てられた、王立美術学校に入学した。
誰でも才能があれば無償で入学することができた。
もちろん入学のための試験があったが、ロランは審査をした講師がうなるほどの作品を描き、ぜひうちに来てほしいと言われての入学だった。
そこで三年間、絵画の技法を学び、この時点でロランは、将来が期待できる若手画家として名前を知られていた。
複数のコンクールで最優秀として選ばれて、ロランの描いた作品は、貴族達が奪い合うように買い漁り、高額で取引された。
ロランは神童と呼ばれていた。
そう呼ぶには少し歳が行きすぎているとも言われたが、まさに神が与えた才能だと、ロランの作品を見た誰もが感嘆のため息を漏らした。
こうして、神の子の再来とまで言われたロランが師事することになったのは、王室専属画家を務めたこともあるガッシュの工房だった。
ガッシュは、王都で知らない人はいないと言われている巨匠だった。
専門は絵画だが、彫刻も多くの有名な作品を残して、手がけた作品のほとんどが、大貴族に買われるか、美術館に所蔵されていた。
いくら神童、神の子の再来と呼ばれても、美術の世界で生きていくには、名のある芸術家に師事することが必要不可欠だった。
まずどの工房に所属しているかを聞かれて、未所属の人間は誰にも相手にしてもらえない。
学生向けのコンクールは、学校を卒業したら参加はできない。
一般のコンクールにでるには、師の推薦が必要で、大きな仕事を任せてもらうのもまた同じだった。
単純な実力社会ではない、学生時代から多くの噂を聞いていたが、ロランは工房に入ってすぐにその洗礼を受けた。
ガッシュは、齢六十を超えていたが、やけにギラついた目をした男だった。
白髪頭に皺の刻まれた顔をしていたが、年齢にしてはしっかりとした体つきで、健康そうに見えた。
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