② 悪魔の囁き

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「俺はバロック。こう言った話の仲介をやっている、何でも屋みたいなモンだ。依頼人については、明かせない。あまり、考えないことだ」 「金さえもらえればどうでもいい。ワケありというのは、どういうことだ?」 「絵を教えるのは、普通にやってもらってかまわない。ただ、坊ちゃんと仲良くしてもらいたいんだよ」 「それのどこが……」 「仲良くってのは、男を教えてやってほしいってことだ。分かるだろう?」 「は!? 何を言ってるんだ? 子供相手にそんなバカなことを!!」  ドンっと机を叩いてロランが身を乗り出すと、バロックは、まぁ聞いてくれと言って手を胸の前で広げた。 「坊ちゃんの歳は二十三だ。成人はしている」 「なんだ……てっきり……、そいつは男に興味があるのか? それなら、絵を学ぶなんて回りくどいことをしないで、専門家に来てもらえよ」 「興味があるかどうかは分からん。ほとんど外部の人間と接触しないから、女の経験もないし、そもそも恋愛の経験すらないだろうな」 「深窓のご令息への性指南ってやつか? 悪いことは言わない。経験を積むために男を使うのは、妊娠したら困るからだろうけど、未経験の男が安易に足を踏み入れたら、二度と女が抱けなくなるかもしれない」  性的指向で悩んでいるわけでないなら、あまりに短絡的な選択だと思った。  ロラン自身は自分で選択した道なので、何も言えないが、後悔がないと言えば嘘になる。  ましてや、他人が良かれと思ってなどと、そんな理由で背中を押すなんて絶対にだめだと思った。 「それでいいんだ」 「はぁ!?」 「それが本当の依頼だ。お前は、絵の教師としてある貴族の令息に近づく。授業はおかしいと思われないように普通にやれ。そのうち慣れれば、監視の目が緩むはずだ。そこで令息に性的な面でもレッスンを始めろ。上手くやって、男を受け入れる体にするんだ。男の味を覚えさせて、子孫を残せないようにする、それが目的だ」 「ご……強姦しろって言うのか!? だいたい性的なレッスンって、いくら世間知らずと言っても、拒否するだろう! 貴族に対する不敬罪で捕まる。上手いことやれなれなんて無謀すぎる」 「上手く丸め込むんだ。相手は立派な成人の男だが、頭は子供だ」 「なっ……!! 何だって!?」
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