③ 初仕事と新たな出会い

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「相性って、大切ですよね。わたしも会社が外資に買われて、社風が変わるのが嫌で...。三十で何の資格もないわたしが辞めて、転職なんて、無謀なことして。わたしって身の程知らずですね」 「真中さんは自己評価が低すぎるよ。あ、さっき、カメラテストをこっそり見てたけど、泣きはほぼ完璧だったよ」  天崎さんは親指を立てた。  聞いた瞬間、琴子は顔を真っ赤にした。 「あ、ごめんね。見るつもりはなかったんだけど、ドアが開いていたから。ほら、どんな新人が入ってくるかって興味もあったし」 「よかったあ。天崎さんみたいな社員に太鼓判を押してもらえて。わたしも一安心です」 「大袈裟だなあ。僕が入りたての頃は、カメラの前ですぐには泣けなかったよ。その点、真中さんはすぐに泣けたからすごいよ」 「へえ、意外です」 「涙って、流そうと思っても出ないもんなんだよ。不思議と」  会話が盛り上がってきた時に、佐伯さんがドアをノックしてきた。  佐伯さんは胸元にバインダーを抱えて、琴子の傍らに来た。 「真中さん。初めての依頼が入りました」  依頼は江東区役所からだった。  ニュータウンとして名高い江東区の児童公園で遊具の事故が起きた。  ブランコを漕いでいた小学生の女子が、ブランコの紐が切れた際、顔面を強く打ち付けて、額部分に消えない傷ができてしまった。  被害者が女の子ということもあって、一生残る顔の傷は、彼女のみならず、その家族にも大きな心の傷を残した。  事故は区が運営する公園で起きたことから、両親は区を相手取り、損害賠償請求の裁判を起こす予定だという。  もちろん、ブランコの紐が切れるなど、あってはならないし、3か月に1度のメンテナンスが適切に実施されていたかは怪しい。区がメンテナンスを怠っていたとすれば、それは大問題だし、江東区役所は税金泥棒だと非難を浴びるだろう。
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