③ 初仕事と新たな出会い

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 早くもSNSでは江東区児童公園と江東区役所が炎上していた。騒ぎの鎮静化を急いでいる区役所は最後の砦とばかりに、ラルムに記者会見場での謝罪要員の派遣を依頼してきた。  ラルムにとっては、言い方は悪いが、おいしい依頼だった。そして、その会見に琴子が適任だと判断された。言わずもがな、琴子にはおあつらえ向きの初陣である。 「記者会見は一週間後、江東区役所の多目的広場で午後三時から行います。それにあたって、真中さんは区役所職員の役になります。都市開発課の職員です。それにあたって、こちらが都市開発課の仕事内容をまとめたもの。それから、こちらは事故の詳細と、当社のマニュアルに沿った想定問答集です。記者会見までに頭に叩きこんでください。健闘を祈ります」  佐伯さんはにこやかな顔でバインダー三冊を琴子のデスクに置いた。  バインダーをめくると、細かな文字がびっしりと書き込まれていた。 「あらら、いきなり新人にはきつい内容だな。でも、真中さんはそれだけ期待されているってことだよね」  天崎さんは他人事のように言った。まあ、他人事なんだけど...。  琴子は午前中と午後を使って、資料を読み込んだ。人材派遣会社とはいうものの、実態は地味で、あまり夢を感じられないものだった。それでも、琴子はこんな自分を採用してくれた会社に恩返しがしたかった。  思えば、琴子は人に期待されることが、あまりなかった。今、その期待に応えるべく、猛然と資料を読み込んだ。  果たして、前の会社でこれだけ真摯に仕事に向き合ってきただろうか。和樹との結婚ばかり夢見てきたのではなかろうか。
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