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イノウエとゴンゾー警部はヤンのアジトで家宅捜索を行っていた。何が出てくるか、その結果が二人の運命を左右する可能性があった。捜索は緊張感に満ちていた。
机の上には簡易量子転送機の取説が置かれ、その脇には量子もつれ液の空き瓶が7本、乱雑に並んでいた。ゴンゾー警部は眉をひそめた。「あの野郎、極悪だ。」
イノウエが鍵付きの金庫を指さしながら言った。「鍵付き金庫にこんなものが…」彼が取り出したのは解放軍の暗号鍵だった。そして、さらに帝国軍の暗号鍵も見つかった。
ゴンゾーが壁にかかったポスターを見つめ、突然「そういうことか!」と叫んだ。ポスターにはアイデンティティに関する七つの哲学疑問が書かれていた。
【同一性とは何か】この哲学的命題は、人間のアイデンティティや「同一性」についての深い疑問を提起します。以下はその要点です。
肉体の移替え: 記憶と人格は保持されたまま、ただ肉体だけが新しいものに置き換わる。肉体が変わってもアイデンティティは保たれるか。
記憶と人格の複製: 肉体は同じだが、記憶と人格が複製される。肉体が同じでも、記憶と人格がコピーされた場合の同一性。
人格の変化: 肉体と記憶は同じだが、人格だけが異なる。異なる人格が同一の人と見なされるか。
記憶の喪失: 肉体と人格はそのままだが、記憶が失われる。記憶喪失がアイデンティティの維持にどう影響するか。
記憶の置換: 肉体と人格が異なるが、記憶だけが別人のものに置き換わる。記憶がアイデンティティにとってどれほど重要か。
行動の一致: 肉体と記憶が異なるが、人格や行動が元の人と同じ。外見や記憶の違いを越えて行動が同一性を定義できるか。
理念の模倣: 肉体、記憶、人格が全て異なるが、失われた人の理念を模倣する。アイデンティティが外的行動や理念によっても定義される可能性。
これらの命題は、アイデンティティの概念に関する重要な考察を促します。
◇ ◇ ◇
イノウエが静かに続けた。「ヤンは禁猟種の複製を企んでいたわけですね?」
「手に入れた獲物は一匹だけでいい。増やして売りさばけば大儲けできる」とゴンゾーは冷静に推測した。
「ただ、量子テレポーテーションによる生体コピーは倫理上の問題もあり、前人未到です。」イノウエが倫理のジレンマを指摘した。
ゴンゾー警部が深い溜息をついた。「その人体実験をカリナで試そうとしてたんだろうな。」
「実験は成功したようですね」とイノウエは証拠を指摘した。
「だったら拙いだろう。ルルへ飛ぶぞ!」
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