150人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんね…ゆうま……、ごめんね…」
優馬の体がスー、と霧のように消えていく。
死んでからも、私に会いに来てくれたんだ。
きっと、優馬の死と向き合わせてくれる為に。
「別にいいよ、変に気に病むことねぇからな?俺は先に向こうで待ってるから」
「いやっ…、私も…、私も一緒に…っ」
「馬鹿野郎。何のために俺が身を呈して守ってやったと思ってんだよ」
「でも…っ」
「いいんだよ。お前は、前見てちゃんと生きてろ。な?……あんま早くこっち来んな。シッシッ…」
そう言ってまるで私がハエみたいに、手を払う彼。
「うん…、分かっ…た」
目の前にはいつもみたいにニッ、と歯を出して笑う彼が居た。その顔は私が大好きな彼の顔だ。
「守ってくれてありがとう…。大好き…大好きだよ優馬っ…」
そう笑いかけた私の視界にはもう、優馬は居なくて、置き土産のように手中に残された小箱を私はそっと抱きしめた。
【終】
最初のコメントを投稿しよう!