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その日。
母と些細な事で喧嘩した私は夜の公園で黄昏れていた。フラフラと覚束無い足取りでブランコに座る。ギー、と鉄の錆びた音が豪快に響く。
それでも構わず漕ぐ。ひたすら漕いだ。
どれだけそうしていたか分からない。
気が付いたら夜の22時を回っていた。
12月。寒空の下かじかむ手はすっかり鉄の匂いが染み付いている。でもそんな事どうだって良かった。今は家に帰りたくない。片意地を張るようにそこに陣取る私に、やけに明るい声がかかる。
「おぉ、九条玲乃。何してんだよ、こんな時間に。補導されるぞ?」
もう何時間も俯きぱなっしだった顔を上げる。揺れ動く金髪。制服の下にパーカーを着込んだチャラチャラした彼が目の前にいた。
彼は一見筋金入りのヤンキーだ。
「別に何も。あんたこそなんでここにいんの。てかフルネームやめて」
公園内に1本だけもの寂しく突っ立っている灯りに照らされた彼は他校に通う同い年須藤優馬。
前に一度友達と行ったカラオケで数時間だけ何故か一緒に歌うことになっただけの間柄だ。多分その場のノリ。
しかし偶然にも家が近かった為か、こうしてこの辺りで時々会う事も多い。
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