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だけどそれはきっかけでしかなく、別の日も。また別の日も。彼を考えると気が付いたら胸が熱くなっていた。恋なんて自分とはまだ無縁だと思っていた。
だけど確かにあの日から私はヤンキーなんだか真面目なんだかよく分かんない彼に惹かれていったのだ。
付き合い始めたのはそれから2ヶ月後の事。
その日は学校帰りに私が彼を呼び出して、夜またあの公園で会った。
それが2月14日。バレンタイン当日。
私が後ろ手に持っているのはラッピングされたチョコレートだった。
「九条ー!わりぃ、まった?」
「ううん。私も今来たとこ」
「はぁー、よかった!」
ニッ、と、安心したように歯を出して笑う彼。
屈託のない笑顔を彼はいつも真っ直ぐに向けてくる。私がどんなに落ち込んでいようが、いまいが、関係なく。一直線に。
私はチョコレートが彼に見えないよう、そっと体の後ろで隠していた。
「で、話ってなんだった?」
元はと言えば、バレンタインちょーだい、と事前に言ってきたのは彼の方。そしてそのきっかけに乗っかろうとしているのは言うまでもない。私だ。
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