結局その日、彼は待ち合わせ場所に来てくれなかった。

3/21
122人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
だけどそれはきっかけでしかなく、別の日も。また別の日も。彼を考えると気が付いたら胸が熱くなっていた。恋なんて自分とはまだ無縁だと思っていた。 だけど確かにあの日から私はヤンキーなんだか真面目なんだかよく分かんない彼に惹かれていったのだ。 付き合い始めたのはそれから2ヶ月後の事。 その日は学校帰りに私が彼を呼び出して、夜またあの公園で会った。 それが2月14日。バレンタイン当日。 私が後ろ手に持っているのはラッピングされたチョコレートだった。 「九条ー!わりぃ、まった?」 「ううん。私も今来たとこ」 「はぁー、よかった!」 ニッ、と、安心したように歯を出して笑う彼。 屈託のない笑顔を彼はいつも真っ直ぐに向けてくる。私がどんなに落ち込んでいようが、いまいが、関係なく。一直線に。 私はチョコレートが彼に見えないよう、そっと体の後ろで隠していた。 「で、話ってなんだった?」 元はと言えば、バレンタインちょーだい、と事前に言ってきたのは彼の方。そしてそのきっかけに乗っかろうとしているのは言うまでもない。私だ。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!