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「あの、さ、バレンタイン……はい」
男子にチョコをあげる行為自体初めての経験だった。緊張して手が震える。
ゆっくりと彼の前にチョコを差し出すと彼は目を輝かせて私を見た。
「え?マジ?俺に?」
コクリ、と小さく頷くと彼は「やべぇ、すっげぇ嬉しい」と口元に手を当てて喜んでくれた。
そんなピュアな反応が来ると思ってなかった私は「そんなに?」と微笑む。
「そんなに。ありがとな」
「うん」
手ぶらとなった手をギュッ、と握る。
その時。告白の勇気が最後の最後まで出せない自分に気づいてしまった。
……言わなくちゃ。
今日、これを渡したら言おう、ってあんなに覚悟決めてここまで来たのに…。
「なぁ、九条」
彼が白い息を吐きながら私を見つめる。
その真剣な眼差しは私の体を貫通するんじゃないか、って程強く熱い。
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