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「えー、そんなに寒いの?」
「一応。ほら。マフラーあれば優馬くんと一緒に巻けるでしょ?」
少女漫画が好きな母はあのよくあるシチュエーションを想像しているのかニンマリとしていた。
「しっ、しないから!」
「えー?」
「じゃ!行ってくる!」
「行ってらっしゃい」
人当たりのいい性格の優馬。前に1度家に遊びに来た時はかなり真面目で紳士的な格好をしていたからか、私の母からの評価はとても高い。いつもはダボダボした緩い格好な事が多いのに、決めるところはちゃっかり決めて…。優馬は時にずる賢い。
待ち合わせ場所に到着したのは10時ピッタリだった。母の言った通り、外は極寒。今にも雪が降りそうだ。キンキンに冷えた手をポケットから出して彼にメッセージを送る。
【公園着いたよ】
それだけ送ってすぐにスマホをポケットにしまった。手袋も持ってくるべきだったかもしれないな、と思う程、頬を撫でる風は鋭い刃物みたいな冷たさを放っていた。
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