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涼しげにカードを交換しておいて、目の前ではにかむ楓の顔を凝視できない。だって数年後の私は…楓と距離を取っているのだから。
……いじめを、見て見ぬふりしているのだから。
「…嫌?」
なかなか返事をしない私に心配そうな眼差しを楓が向ける。
「ううん、嫌じゃない。なろう」
「やった!」
楓とはここで友達になれたから、学校ですれ違った時なんか雑談する間柄になったし、時々家でも遊ぶ程よく仲良くなった。
共通の趣味が接点のなかった私達の関係をぐん、と縮めてくれたのだ。
ーーううん、嫌じゃない。なろう
何、言ってんだろ…。
いずれ……、何年後かの未来…
私は彼女を避けてしまうのに。
ふと我に返った私は目の前の楓の笑顔を見つめ、ズキズキと痛む胸にそっと手を当てた。
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