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下駄箱で靴を履き替え、降り曲がったかかとを手でギュッ、と押し込む。
ふと空を見上げるとさっきまで快晴だった青空にもくもくとグレーの雲が押し寄せていた。
そして1分もしないうちに、雨がぽたぽたと地面を濡らし始めた。
うわ、雨じゃん……
天気予報を見る、という習慣がないせいで、突然の雨に打たれる事は度々ある。
だけど思いのほか強くなってしまった激しい雨に今日の私は顔をしかめるしかない。
ザー!と勢いよく地面を叩く雨の音が鼓膜にブスブスと刺さる。梅雨の時期だから仕方ないか。
はぁー…ついてない。まぁ天気予報見ない私が悪いんだけど。
不貞腐れながら北校舎にある公衆電話で母に迎えを頼もうか、と迷っている時、背中に声がかかった。
「あ、さくらちゃん」
聞き覚えのあるその声に振り向いた私はスカートをギュッ、と握りしめた。何故か身構えて、喉がヒュっ、となる。一気に緊張が走った。
「楓…」
そこに居たのは楓だった。
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