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校門をくぐったあたりで1度だけ昇降口の方を振り返ってみたけれど、そこにはまだ折り畳み傘を握りしめ、ポツン、と佇む楓の姿があった。
衣類に染み込む雨の重みが……
最後に見た楓の姿が……
なんだか重くて、学校から家までの10分程度。
全速力で走っているはずなのに、学校からどんどん遠ざかっていく自分の足はまるで何かに掴まれているかのように走りずらかった。
***
ピーポーピーポー…
救急車…?何かあったのかな?物騒だな。
ちょうど自宅が見えてきた辺りで救急車のサイレンが遠くの方で聞こえてきた。まだ雨は降り続けている。
雨のせいか霧もぼんやりと漂っていて、視界が悪いから誰か事故にでもあったのかもしれない。
「ただいまー」
家に帰るなり、すっかり雨を吸収した靴下を洗面所で脱ぎ、雑巾のように絞る。
かなり雨に打たれたから薄汚れた水がじわー、と溢れていく。両親は仕事で夜遅くまでいないため、それまでこの家は私の独占状態だ。
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