プリファレンス・ラヴ

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(どうか寺島先生に会いませんように!) 祈るように院内をコソコソと進む。そして運がいいことに医局には寺島先生じゃない先生たちがいて安心した。 そんなこんなでなんとか出前を済ませホッとしながら(器を取りに行く時にも気をつけなくっちゃ)なんて考えていた刹那、突然グイッと腕を掴まれ大きな掌が私の目と口を同時に覆った。 (?!!) 声にならない悲鳴を上げたが何の抵抗にもならず、強い力によって私は何処かに連れ込まれてしまった。 バタンッとドアが閉まる音と同時にカチャッと鍵が掛けられる音がした。当然今の私の気持ちは恐怖以外の何者でもない。 (何、突然! どうなっちゃうの、私!) 泣きそうになった瞬間、顔を覆っていた掌が外された。 「……え」 ぼんやりとしたほの暗い照明の室内で私の前にいたのは寺島先生だった。 「て、寺島先生?!」 「──黙って」 「!」 短くそういわれ体が硬直する。私の目の前にいた寺島先生は白衣を着ていた。 (は、白衣姿の寺島先生!) 既に胸の動悸は始まっていた。一瞬で体中に熱がこもり、堪らない気持ちが競り上がって来ていた。 「……やっぱり田畑さんって白衣フェチ、なんだね?」 私の怪し過ぎる動向に寺島先生は冷静に言い放った。 いきなり核心を突かれ動揺しまくりの私。その挙動は明らかに『そうです』と答えているようなものだった。 (バレちゃったぁぁぁー!!) とてつもない羞恥心から思わず泣きそうになった。
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