涙くん、

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涙くん、

 僕の隣には、いつも涙くんがいる。  涙くんは、よく泣いている。  涙くんは僕にしか見えなし。  僕らの会話は、誰にも聞こえない。  僕が中学校から帰って、自分の部屋に入る。  今日来ていたTシャツは泥だらけだった。  僕の隣に、涙くんは、いつもいる。  何処にいても、何処にいようとも、涙くんはいつも僕と一緒だ。  今も僕のすぐ隣に、涙くんが立っている。  そして、涙くんは泣いている。  僕は涙くんに尋ねる。  「また泣いているの?」  涙くんが泣きながら答える。  「うん」  僕は涙くんに言う。  「君は弱虫だな」  涙くんが謝る。  「ごめんなさい」  僕はTシャツを脱いで、着替える。それから洗濯機のある洗面所に向かう。僕は洗面台でTシャツを洗い、泥を落としてから、洗濯機にいれた。  涙くんが言う。  「ママが見つける前に洗うのかい?」  「ああ、こんな物をママが見たら悲しむからね」  僕は、洗濯が終わるまで、勉強をする事にした。  携帯電話を、テーブルの上に置いて、僕は教科書と問題集を広がる。  涙くんが言う。  「教科書がボロボロだね」  そう言うとまた涙くんが泣く。  「仕方ないよ」  僕はそう言い、問題集を解く。  涙くんはまだ泣いている。  涙くんは泣きながら言う。  「あいつらからのメッセージだね」  「いいんだ。気にしなきゃいいんだ」  涙くんが、僕に提案する。  「通知が来ないようにしたら良いのに」  「そうは思うけど。全無視も出来ないからね」  涙くんが泣く。  「涙くん、また泣くのか? 君は弱虫だな」  僕がTシャツを干し終わった頃、ママが帰っていた。  「ただいま」  「おかえり」  「今日学校はどうだった?」  「今日は、普通だよ。いつも通りで、何も変わらない」  そう、今日も、昨日と変わらない。  いつも通りだと僕は思う。  僕の隣で涙くんが泣いている。  でも僕は笑顔でママに言う。 「いつもと同じだから」  ママは安心したように言う。 「なら良いわ。私は泰史(やすし)の笑顔がみたいの。泣き顔や涙を見たくないの」  僕は笑う。  「僕は、泣いたりしないよ。泣き虫じゃないんだ。それに泣くようなこともないんだ」  ママが頷く。  「そうね。泰史(やすし)は強い子で、いつも笑顔だから」  僕は笑う。  涙くんは、また泣いていた。
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