涙くん、、

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涙くん、、

  僕が朝起きて言う。 「学校に行きたくない」    涙くんが言う。  「休めばいいよ」  僕は答える。  「ママが悲しむから、学校は行かないとね」  僕は着替えて、カバンを抱えて、キッチンに行く。  ママが忙しそうに、家事をこなしていた。  ママが言う。  「トーストは焼けているわ。ジャムは出ているし。カップスープは自分で作って」  僕は笑顔で頷く。  そしてカップスープを作って、パンを浸して、口に入れた。  でもなかなか飲み込めない。  涙くんが聞いた。  「食べられないの?」  「食欲が無いんだ」  「学校を休んだら良いのに」  「ダメだよ。ママが悲しむよ。学校は行かなきゃ」  涙くんが泣いた。  僕は言う。  「涙くんは泣き虫だなぁ」    僕は立ち上がって、朗らかに、ママに言う。  「もう行くよ」  「あら、そう。行ってらっしゃい」  僕は家の外に出る。  行き交う人は、せわしなく。  自分の行くべき場所に向かって行く。  僕の足取りは重くて。  隣で涙くんが、しくしく泣いていた。  僕は言う。  「もう泣くなよ。湿っぽくて仕方ないよ」  涙くんが謝った。  「ごめんなさい」  僕は涙くんに言う。  「いいんだ。分かっているんだ。君が泣くのは僕のせいだって」  段々学校に近づき。  僕はドンドン足取りが重くなる。  体の半歩心がついていく感覚で、僕は歩く。  すると、僕は、肩を叩かれた。  僕の隣の涙くんは、死ぬほど驚いて、「ぎゃー」言って飛び跳ねた。  僕も驚いたが、何でもないふりをしながら、後ろを振り向く。  「おはよう」  僕の顔を見て、肩をたたいた男が言った。  担任の宗川先生だった。  「おはようございます」  「元気か?」  僕は笑顔で答える。  「もちろん元気です」    先生は躊躇ながら言う。  「元気なら良いが。なぁ、何かあるなら先生に言って欲しいんだ」  「何を言うんですか?」  先生は言葉を選んで言う。  「うーん。それは秋村さんが知ってるだろう?」  「僕ですか?」  「そう君だ」  僕と先生は並んで歩く。  校門をくぐり、先生は職員玄関に行く。  僕は、学生用の玄関に向かった。  涙くんが言う。  「先生は知っているんだよ。何かあったら言ってくれってさ」  僕が言う。  「先生なんて、信用できないよ」  涙くんが悲しそうな顔をした。  そして、しばらく陰鬱な顔で、僕の隣を歩いていた。
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