涙くん、、、、

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涙くん、、、、

 放課後、帰宅部の吉田を待ち伏せしようと愛妃が言った。  吉田は、僕を虐めている5人の中のボスだ。  愛妃が言う。  「陸橋の上がいいな」  そう言うと、愛妃が陸橋を登って行く。  「なんで陸橋なの?」  「まぁ、みてな」  僕らは陸橋の上で、吉田を待った。  10分もすると吉田が陸橋を登ってきた。  吉田はすぐ僕に気がついて、ニヤニヤした。  「なんだぁ、泰史(やすし)。俺のことを待っていたの?」  吉田が僕に近づいてきた。  「なぁ、泰史(やすし)、金持ってない? 俺、腹減っちゃってさぁ」  僕が答える。  「金なんてないよ」  僕の隣の涙くんは、既に怯えて泣いている。  吉田が僕の肩に手を回して、僕の顔を覗き込む。  僕はヘラヘラと笑って言う。  「本当にないんだ」  「家に帰ればあるだろう?」  僕は笑いながら言う。  「ごめん、ないよ」  吉田が、僕の肩に左手を回したまま、右手で僕のお腹にパンチを入れた。  僕はお腹を殴られる。  僕は目を白黒させながら呻く。  「ウグググゥ」  吉田が笑う。  「あはははは、面白い顔だなぁ。良い顔しているよ。泰史(やすし)は、殴られても、嬉しそうだよな」  吉田はまた数発、お腹にパンチを入れた。  「ウグググゥ」  僕は呻く。  そこに愛妃が現れた。  「はーい。吉田ァ。いい動画撮らせてくれてありがとう」  「愛妃、おまえ、なんでそこにいるんだ」  「さぁね。いたからいたんで、理由なんかいる訳?」  「動画を消せよ」  「嫌だよ」  「消せよ」  吉田が愛妃に掴みかかる。  すると愛妃は、吉田の後ろにいた僕に、愛妃の携帯を投げてきた。  吉田が、空を飛ぶ携帯を目で追う。  すると愛妃は、吉田の視線が愛妃から外れた隙に、吉田の左袖掴んで、吉田の右襟を掴んだ。  こうなると、もう吉田は動けない。  柔道で、左袖を掴まれて、右襟をとられたら、それは技をかける準備が整った事を意味する。  吉田は、愛妃に身体を掌握された。  愛妃が言う。  「技をかけて、気絶させても良いんだけど」  愛妃が陸橋の下をみて言う。  「ここから投げ落としても良い」  吉田が焦る。愛妃ならやりかねないと思ったのだ。  「止めてくれ。そんな事されたら、俺は死んでしまう」  「そのくらいじゃ死なないだろう?」  愛妃はニヤニヤ笑う。  吉田が必死に愛妃を説得した。  「止めてくれ。これは弱いもの虐めだぞ。俺が落ちて怪我して、学校にバレたら、愛妃だって困るだろう? 大会に出られなくなるぞ」  愛妃が凄む。  「大会に出られなくなる? 上等だ。弱いもの虐め? 先にやったのはどっちだよ」  吉田が悲壮な顔をして言う。  「許してくれ」  「良いよ。落とすのはひとまず許す。ただこれからは泰史(やすし)にちょっかい出すなよ」  「分かった。分かった」  愛妃が手を離す。  吉田はそそくさと逃げて行った。    涙くんが僕に聞く。  「もうやられないかなぁ」  僕が言う。  「分からないよ」  愛妃が僕の手から携帯を取り。  動画を確認した。  愛妃が言う。 「他の4人も動画撮ろう」
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