嗤われる擬態語

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嗤われる擬態語

まいど。 一滴もアルコールを口にしとらんのに、酔っ払いのようなテンションで、串カツ頬張りながら、 「あ、一枝修平。」 やら、何やら昭和のプロ野球選手、コーチの名前をウダウダ挙げていた脳内おっさんのめたすたです。 関西人は、物事を端的に表すのに擬態語を使うのが得意な人種と言われている、らしい。 例えば、 「自分、シュッとしてんなぁ。」 は、「イケメンで垢抜けている」或いは「とても洗練されている」ということを表す。 ここでいう「自分」は、「あなた」、「君」である。 「そこに行くにはな。この道をピューッと行って、2つ目を左にカクッと行って、ほんでバーッと歩いてったら右に見えてくるわ。」 は、 「その建物は、この道を真っ直ぐ歩いて2つ目の交差点を左に曲がり、そのまましばらく真っ直ぐ歩いて行きますと右側に見えてきます。」 という意味になる。 つい数分前、ある方の小説を拝読していて思い出した。 8年程前やったか。 左胸が断続的に痛むので、当時の職場兼わたしの宿泊所やったワンルームマンションから徒歩5分程の循環器の医院に行ってみた。 母や母方の祖母は脳梗塞を患ったし、親父は急性心筋梗塞、父方の伯父、従兄に狭心症の者がいて、わたしもその辺は可能性があるからと、一度調べてもらうことにしたんである。 初診なんで問診票を書く。 さて、この痛み方をどう表すか。 わずか数秒で考えるのを諦めたわたしは、 「左胸が断続的に『シクシク』と痛む。」 と書いた。 「チクチク」ちゃうねん。 伝わるかなぁ。 問診票を受付に提出して、待合室で座っとったら、受付の姉チャンらの話す声が耳に入ってきた。 「ねぇ。『シクシク』やって。」 「ふふふ。」 人が心臓疾患かもしれんと思うて仕事の合間に来てんのに、ナニ嗤てんねん。 診察室に呼ばれ、医師に促され向かいに座ってまずわたしは、 「分かりやすい表現の仕方ができなくてすみません。『チクチク』とはちょっとちゃう感じがしたもので。」 と厭味をかました。 受付の姉チャンらのうち一名には、確実に聞こえたはず。 表情までは分からんかった。 それからまぁ、検査やら何やかんやがあって、結局「冠攣縮性狭心症の疑い」という診断結果やった。 念の為、「御守り代わり」とニトロを渡された。 その後、しばらくは断続的に痛みがあったりなかったりして、次は別の医院を紹介してもらいCT検査を受けた。 異常は見られんかった。 今でも、忘れた頃に「チクチク」とはちゃう痛みを感じるが、それ以来あの医院へは行ってへん。 痛みの頻度はかなり減った。 様子を見ながら付き合うしかない。 そんな訳で、今日は、仕事が終わったらサッと帰って、チャッチャと洗濯もん片付けて、バーッと家事をして、ボ~ッとしたいめたすたでした。 ほな、また。 令和5年12月21日 出勤直前の木曜朝
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