1 胡蝶は舞って我を誘う

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1 胡蝶は舞って我を誘う

         ――胡蝶(こちょう)は舞って我を(いざな)う。        羽をはらり、はらりとはためかせ、華麗に舞うのは夢の中。        輝く銀の鱗粉(りんぷん)を、その身に纏い、舞わせて光らせ、漂わせ。        胡蝶の羽が、眠れ、眠れとやわい羽、我のまぶたをやさしく撫ぜる。        胡蝶の羽が、我のまぶたをやさしく撫ぜて――まぶたを閉ざさせ、夢を見させる。        胡蝶の夢を、見ておりました。        これが現実――あれが夢。        ――あの()の夢よ、我の胡蝶よ。        胡蝶の夢よ――あともう一度、あともう一度だけ、胡蝶の夢を見させておくれ。        儚き胡蝶よ、儚き夢よ、このまぶたの裏に現れよ。        我の胡蝶よ、我の胡蝶、現れておくれ、夢の中。        我が魂に刻み込め、忘れぬように、現れよ。        現れよ――我の胡蝶よ、胡蝶の夢よ。現れよ。            あともう一度だけ、胡蝶の夢を、見させておくれ。            
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